チリ(トウガラシ)

 トウガラシ属の植物の多くがチリとして利用され、形や大きさ、色も味も様々である。原産地は中央アメリカ、南アメリカおよび西インド諸島で、何千年も前から栽培され、この地域がスペインに征服されてから世界に紹介されるようになった。コロンブスは、「カリブのエスパニョラ島にはアクシ(インディアンの言葉でチリのこと)というペパーよりも強い味のスパイスがあり、現地の人々の食事にはこれが欠かせない」と書き残している。また、1495年のコロンブスの第二の航海では、同行したクオネ喞が、「この島にはバラのように生い茂る植物があり、実の長さはシナモンくらいでペパーのような種がつまっている。カリブ人とインディアンはこの果物を我々がリンゴをかじるように食べている」と書いている。
 1569年には医者のニコラス・モナードが、新大陸の植物について著した本の中で、スペインで人気の出たチリに多くの頁を割いている。17世紀のハーバーリスト、ジョン・ホプキンスの本には、スペインやイタリアではチリが家々の窓辺に鉢植えにされていると書かれ、いかに南欧の人々の生活に浸透してきたかがうかがえる。
 彼はさらに20種のチリを紹介し、形はオリーブやサクランボに似ていたり、あるいはハート型や槍型で、しわだらけだと表現している。
 今日では熱帯全土でおよそ200種類のチリが認められ、赤やオレンジ、黄、紫などに熟した実や、まだ緑色の未熟な実などが利用されている。生のチリを買うときには、カリッとしたしわのないものを選ぶのがコツである。また、熟した実を乾燥させたものや砕いたもの、フレーク状、粉末のものなどもあり、さらにいろいろな商品形態を取っている。ペパーやジンジャー、ターメリック同様、現在最も広い地域で生産されているスパイスのひとつである。

チリの種類

メキシコのチリ
小さくてピリッと刺激的な、未熟な緑色のチリは、メキシコ料理には欠かせない。乾燥したものではアンチョ、パシラ、グアヒーロ、チポットル、カスカベルといった種類が多く出回っている。

・アンチョ
・カスカベル
・ハラペーニョ
・セラノ
・チリセコ

スペインのチリ
ほどよい辛みのある薫製のチリで、スペイン料理には欠かせない。ニョーラ、ロメスコ、それにチョリセロと言った種類には塩ダラのビズカイナ風やロメスコソース、チョリソなどの料理の味つけの主役とも言える。

・グインディラ
・モロン
・ニョーラ
・スモールチリ

カエインペパー
細長くとてもホットなチリ。手に入りやすい種類である。

酢づけのチリ
酢づけの黄緑色のチリ。ギリシャやトルコなどで酒のつまみに好まれている。

ロンボク
先のとがった、強烈な辛みのあるレッドチリで、タバスコチリによく似ている。インドネシア料理に使う。

ハバネロチリ
西インド諸島原産のランプ型のチリ。色はさまざまで味はとてもホット。

バーズアイチリ
長さは普通2cm以下で小さくとがっている、火ぶくれができそうにホットなチリ。

チリの香味と特徴

分布:
最大輸出国であるインドのほか、メキシコ、中国、日本、インドネシア、タイなどで生産されている。これらの国々はまた、国内でも大量に消費している。スリランカやマレーシア、アメリカでは他国から多く輸入している。

特徴:
熱帯の標高0から2000mにわたる広い地域で生産されている。温帯でも育つが、霜に弱いため、種のときから温室で育て、ある程度に育ってから植え替えしなくてはならない。ピーマンやヤツブサ、シシトウガラシ、パプリカなど一年草のC.annuumと、カイエンペパーなど多年草の低木C.frutescensはもともと同一種と考えられ、しばしば混同されている。C.annuumは高さ30Cmから1mに育つ。C.frutescensは2mほどになり、小さくてピリッと辛い実をつけるものはほとんどがこの種類である。

収穫:
グリーンチリは植えてから3ヶ月ほど後に収穫するが、そのほかのものは熟すまで待つ。熟したものから順に、3ヶ月くらいに渡って収穫し、天日で、あるいは人工的に乾燥させる。多年生のものは1年を越すと実が小さくなり、辛みも減るため、普通は1年単位で育てる。

香味:
香りはあまりないが、味はマイルドなものからホットなもの、燃えるように刺激的なものまで様々である。一般的には大きくて丸く、多肉質のものほどマイルドで、小さくて皮が薄く、とがっているものは辛いとされている。チリをピリッとさせているのは、種や筋および皮に含まれているカプサイシンという物質で、この量は種類と成熟度によって異ってくる。筋と種を取り除くことによって辛みを減らすこともできる。

チリの利用法

料理:
インドや東南アジアの米、メキシコの豆やトウモロコシ、南アメリカのキャッサバなど、熱帯地方では主食の味つけには欠かすことができない。カレーパウダーの辛みや、ピクルスのスパイスに、ペパーソースに、チリオイルやチリエッセンスなどにと、大活躍のスパイスである。エキスはジンジャービールなどの飲み物にも加えられている。
 チリはとても刺激が強いので、扱う前に手をよく洗い、目や肌の敏感なところ、傷口などには触れないように注意しなければならない。

薬用:
生のチリはビタミンCが豊富である。炭水化物の消化を助ける働きもあり、また強壮剤としても用いられる。ただし大量に服用すると胃や腸の炎症の原因になることがある。場合によっては少量でも同じ状態になるため、このようなときは、白いご飯や何もつけないパン、豆類などを食べて沈める。飲みものは焼ける感じをさらに増長させるため避けた方がよい。

チリとカレー料理

 チリやカイエンペパーは、レッドペパーの変種の一つである。ピリッとした辛さは、食欲増進間違いなし!
 カレー料理にも頻繁にチリが使われる。カレーの辛味調節には欠かせないスパイスである。辛さに慣れてくると、辛味を減らすと物足りなく感じ、どんどん辛味を増したくなる。やめられない、減らせない!これがチリの魔力である。
 ただし、胃腸の弱い人は炎症を引き起こすこともあるため、ほどほどに。